愛犬や愛猫の出産は、飼い主にとっても大きな出来事です。
ただ、出産はどんな動物にもリスクがあります。環境や状況が悪ければ出産失敗という残念な結果にもなりかねません。
今回は、主に犬や猫などのペットの出産時、飼い主がするべき準備や適切な対応について詳しくご紹介します。
愛犬や愛猫の妊娠に気付いたら、飼い主はまず何をするべきなのでしょうか。
安心してお産を迎えられるよう、しっかりと様子を観察し、できるだけ準備を整えてあげましょう。
犬や猫が妊娠すると、人間の女性のように体調に変化が起こる場合があります。食欲不振、食べ物の好みの変化、個体によっては嘔吐することも。
飼い主が妊娠に気付いていないと「まさか病気では?」と心配になってしまいそうです。また、病気の可能性がないとは言えないため、心配であれば獣医師さんに相談してみるのも良い選択です。
食欲不振が続くと、母体の体調だけではなく、お腹の赤ちゃんの成長にも影響が出てしまいかねません。できるだけ栄養補給しやすいご飯を用意してあげましょう。
昔から「犬は安産」といわれています。たしかに出産数が多いためか、昔から縁起が良いと思われ、お守りにもなるほどよく聞くことですが、すべての犬が安産というわけではありません。
個体によって差がありますし、小型犬はとくに難産になる可能性が高い傾向があります。愛犬が必ずしも安産を迎えられるとは限らないため、難産に備えた準備も必要です。
万一のときにはかかりつけの獣医師さんと連絡できる体制を整えたり、対処方法を学んだりしておくと安心です。場合によっては自宅ではなく、病院で獣医師さんに管理してもらいながらの出産も視野に入れましょう。
「妊娠中は生活習慣を変えたほうがいいの?」と考えるかもしれません。しかし、基本的には通常通りの生活で大丈夫です。
つわりや食欲不振などで体調が悪くなるようであればサポートが必要ですが、いつもの様子や定期検診で変わったことがなければいつもの生活をさせてあげましょう。
出産時期が近付くと、飼い主もそわそわしてしまいますね。むしろ「愛犬や愛猫のほうが落ち着いているような…」ということも。
ペットは飼い主の様子に敏感です。落ち着かない態度を見ると不安になってしまうかもしれません。頼れる飼い主としてどっしり構え、安心して出産できる環境を整えてあげましょう。
出産に集中できるよう、まずは清潔で静かな場所を用意します。出産時にはデリケートになるため、周囲からの視線を遮るようなついたてや壁があると落ち着きやすいでしょう。
ほかにも以下のような出産時に役立つ道具をそろえておくと安心です。
出産スペースに置いておきます。母体が横たわれる大きさで、産まれた子がどこかへ行かないよう、低めの壁があると良いでしょう。底には新聞紙やタオルを敷き、出産中に汚れたら取り替えてあげます。
産まれた子の体重を測ります。それほど大きな重量に対応できるものでなくても構いません。子の体重は1kg~2kg程度なので、キッチンスケールでも間に合う場合があります。
タオルは乾いて清潔なものを複数枚用意します。産まれた子の身体を拭いたり、体温を上げたりするために使います。濡れたタオルは体温の低下につながるため、使用しないでください。
へその緒を切るときに必要です。消毒したもの、あるいは新品を用意しましょう。
産湯を入れるために使います。なお、産湯の温度は手で触れて「少しぬるいかな?」と感じる程度がベストです。
いよいよ出産時期が近付くと、お母さんは普段と違う様子を見せ始めます。
出産開始の12時間~24時間ほど前から、母体の体温が少し下がります。おおむね1℃ほどの低下になるため、日頃から体温を測っておくと分かりやすいでしょう。
犬も猫も通常時は38℃ほどですが、出産直前になると37℃ほどになることが多いようです。
食欲がなくなったり、嘔吐したりする様子を見せるようになります。
陣痛が原因でそわそわと落ち着きがなくなったり、神経質になったりします。ときには不安定な動揺を見せることもあるため、飼い主ができるだけフォローしてあげましょう。
産まれてくる子を迎え、育てるスペースを確保するため、本能的に巣を作ろうとしています。営巣本能と呼ばれています。異常な行動ではないので見守ってあげてください。
局部から透明の分泌物が出ればお産の始まりです。やがて子が産まれてきます。
もしも分泌物にひと目で分かる異常があれば胎盤剥離や異常分娩の可能性が考えられます。その際には獣医師さんに連絡しましょう。
出産時に何かトラブルがあればすぐに獣医師に連絡します。明らかな異常ではなくても、飼い主が不安を覚えるようなことがあれば連絡してアドバイスを求めましょう。
無事に出産を終えたら、母体がゆっくりと休めるように環境を整えてあげます。
充分な量で食べやすいご飯、新鮮で清潔な水などを用意して、少し離れた場所から見守りましょう。
産まれた子たちの可愛らしさにうっとりするばかりではなく、その養育にも力を入れなければいけません。出産後、飼い主が気を付けたほうがいいことについてご紹介します。
出産で体力を使い果たした場合、母が子のお世話を拒否するケースがあります。
その徴候が見えるのであれば、飼い主や家族たちが代わりにお世話をする必要があります。
犬や猫は複数の子を産むため、すべての子を自宅で育てるのは難しい飼い主も多いでしょう。かと言って無責任に放置するわけにはいきません。出産前に譲渡先を決めておくと安心です。
ただし、有償の譲渡は動物取扱業の登録がないとできません。登録せずに有償譲渡をすると法律違反になるため、譲渡先を決める際には注意してくださいね。
新しい命が誕生する妊娠・出産は嬉しいことですが、その反面、母体に大きな負担がかかります。今後の妊娠や出産はどうするのかをしっかり考え、愛犬や愛猫にとってベターな選択をしてあげましょう。
人間も動物も、出産で新しい命を迎えることは大きなライフイベントです。お母さんにとって負担が大きいため、できる限り環境を整えて、安心して出産できるようにしてあげたいですね。
出産に使う道具の用意をはじめ、かかりつけの獣医師さんとのホットラインの確保や、産まれた子の譲渡先の決定などは、事前から心がけておきたいポイントです。
産まれたあとも飼い主のフォローが必要です。愛犬や愛猫が安心して出産し、そして育児ができるよう、見守りながらも手伝っていきましょう。