豆知識

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知る・学ぶ 2024-06-27

高い再生能力を持つ動物とは? 驚きの力と仕組み、人間との関係について

「トカゲの尻尾は切れてもまた生えてくる」というのをご存知の方は多いと思いますが、動物の中にはこのような「再生能力」を持つ種が存在しています。
今回は、優れた再生能力を持つ動物と仕組みや能力の違い、人間との関係性をご紹介します。

再生能力の定義は?

再生能力とは、生物が損傷や喪失した体の一部を再び作り出す能力を指します。
再生能力には二つの主要なタイプがあり、一つは「完全再生」と呼ばれるもので、失われた部分を完全に元通りにする能力です。
もう一つは「部分再生」という失われた部分の一部を再生する能力で、私たち人間の皮膚が傷を治す過程が部分再生の例となります。
完全再生の能力を持つ動物は、失った部分の見た目を元通りにするだけでなく、機能的にもほぼ同じ状態に戻せるのです。

高い再生能力を持つ動物の種類は?

では、高い再生能力を持つ動物にはどのような種類がいるのでしょうか?
いくつかの代表的な動物と、その再生能力について詳しく見ていきましょう。

トカゲ

トカゲは、冒頭の例でも挙げているように再生能力の代表格と言える存在です。
尻尾が最初から切り離せるような仕組みになっていて、これは捕食者から逃れるために自ら尻尾を切り離す「自切」が目的です。
切り離された尻尾はしばらくの間動き続け、捕食者の注意を引き、その間に逃げるというわけです。
ただし、再生される新しい尻尾は元の尻尾とは異なる構造になります。
主に軟骨で構成され、骨の構造や色が変わり、一度しか再生されません。

イモリ、ウーパールーパー

トカゲ以上に驚くべき再生能力があるのはイモリやウーパールーパー(メキシコサラマンダー)で、尻尾だけでなく、なんと失われた腕や脚、さらには眼や心臓、その他の内臓まで再生する能力を持っているのです。
しかも、再生された腕や脚などは再生される前と見分けがつかないくらいで、骨まで完璧なものと言われています。
これは、損傷部位の細胞が新たな組織を形成するための「脱分化」という働きができるからで、傷ついた部分に細胞が集まり、それが新しい組織に変わっていき、失った部分が元通りになるというわけです。
そのため、死滅しない限りは無限に再生できるとされています。

シカ

シカの再生能力は、毎年新たに生える角に見られます。
シカの角は毎年脱落しますが、一旦脱落したあと短期間で大きな新しい角が生えてくるのです。
再生能力は骨細胞の活動と新しい血管の形成によって支えられており、シカの健康状態や栄養状態が大きく関係していると言われています。
そのため、元気なシカほど立派な角を再生します。

ヒトデ

ヒトデの再生能力も非常に強力で、失われた腕を再生する能力を持っています。
これはヒトデの体が持つ細胞の高い再編成能力によるもので、中央の円盤部分にある再生細胞が活性化して再生されます。
さらに、切断された腕に少しでも円盤部分の組織が残っている場合は、失われた腕から全身を再生できるため、腕から新しい個体が生まれるケースもあるのです。

プラナリア

プラナリアという小さな扁形動物は、体が分割されてもそれぞれの部分から新しい個体が再生します。
全身に多能性幹細胞を持っているため、新しい組織を形成できるのです。
つまり、いくつに分割されても、分割されたそれぞれが再生して同じ個体になるということです。
ある実験によると、200以上に分割してもほとんどの個体が元に戻り、脳まで再生されたと言われています。
ただし、切断された際に自身の消化液によって死滅してしまうケースがあり、再生しない個体はこれに該当することが多いようです。
また、ナマコやイソギンチャクも同様の能力があるとされています。

ヒドラ

ヒドラは池の水草などに生息している、とても小さくて細長い触手を持つ生物で、あまり馴染みがないかもしれませんね。
ヒドラもプラナリアと同じく幹細胞が豊富であるため、体の一部が切り取られてもそこから新しい個体が再生します。
さらにヒドラの場合は、一定の間隔で再生能力を自ら使用して体の全てを入れ替えていると言われており、不老不死だという説もあります。

ミミズ

ミミズも体が二つに切れた場合、それぞれの部分から新しい個体が成長することがありますが、この能力はミミズの種類や損傷の程度によって異なります。

カニ、エビ

カニやエビも再生能力を持つ動物の一種で、脚や爪、触覚を再生できます。
新しい爪や脚は最初は小さく弱いですが、脱皮を通じて成長し、次第に元の大きさに戻ります。

これらの他にも、頭部のみになっても心臓を含む全てが再生されるウミウシなど、様々な再生能力をもっている動物が存在しています。

動物の再生能力と人間の再生医療の研究

動物が持つ再生能力は、人間の「再生医療」の研究にとても役立っています。
再生医療とは、怪我や病気で傷ついた人間の体の部分を修復して元通りにする技術を指します。
動物たちの再生の仕組みを研究し、人間も同じように再生できる方法を見つけようと試みているのです。

幹細胞の力の研究

再生能力が高い動物の多くには特別な幹細胞があります。
例えば、プラナリアやイモリ、ウーパールーパーは、幹細胞を使って体の失った部分を再生します。
幹細胞は、骨や筋肉など様々な種類の細胞に変化できるため、傷ついた体を修復するのに適しているのです。
再生医療では骨髄移植や皮膚の移植、心臓や肝臓の修復など、幹細胞を使った研究が進められています。

遺伝子の研究

再生能力を持つ動物の遺伝子を調べ、人間にも必要な遺伝子を見つける研究も行われています。
ヒトデやプラナリアの再生に関わる遺伝子を解析することで、人間の細胞が再生するための重要な遺伝子がわかってきており、遺伝子治療や細胞療法への適応が期待されています。

人工的な臓器を作る研究

動物の再生能力の研究は、人工的に臓器を作る技術の開発にも貢献しています。
組織工学という分野では、特別な場所に幹細胞や成長因子を入れて、新しい組織や臓器を作り出す技術が開発されているのです。
これが将来、移植手術に使われることが期待されています。

再生を助ける物質の研究

再生能力を持つ動物からは、幹細胞の他に再生を促進する物質が見つかっています。
例えば、イモリやウーパールーパーの体内には、再生を助けるタンパク質やホルモンがあり、これを人間の治療に使う研究がされているのです。
特に傷に対して人間の皮膚が持つ再生能力を高める治療法が開発されていて、火傷や外傷の治癒を早める手助けとなり得ます。

こうした研究は、動物たちの再生能力を活用し、人間の医療に新しい可能性をもたらしています。
再生医療はまだ発展の途中ですが、動物の再生能力の研究が進めば、より効果的な治療法の発見が期待されています。
動物たちの再生能力を研究することは、未来の医療技術を進歩させるためにとても重要なのです。

動物たちの再生能力を使わせてもらおう

このように、再生能力を持つ動物たちには驚きの仕組みがあることをお伝えしました。
トカゲの尻尾、イモリやウーパールーパーの四肢や内臓、シカの角、ヒトデの腕、プラナリアの全身再生など、それぞれが独自の再生方法を持ち、バラエティに富んでいます。
これらの再生能力は、幹細胞の利用や細胞の変化、遺伝子の働きなど複雑な仕組みによって成り立っており、この研究は、私たち人間の再生医療の分野に大きな力を与えてくれているのです。
これから先、この分野の研究が進むと、さらに多くの発見が生まれるでしょう。
動物たちの再生能力をありがたく参考にさせてもらい、医学の発展に期待したいところですね!

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知る・学ぶ 2024-06-20

湿気対策はどうしてる? 湿度がペットに与える悪影響と対処法

美しい季節の移り変わりとはいえ、梅雨や夏場の湿気には参ってしまいます。人間でもひと苦労なのですから、ペットはもっと大変なのでは…?と心配になりませんか。
今回は、犬や猫をはじめ、ペットに適した湿度や湿気対策などについて詳しくご紹介します。

湿度が高すぎるとペットに悪影響! 考えられるデメリット

湿度が高い日は人間でも不快感を覚えたり、体調不良になったりしがちです。ペットも同様で、湿度が高すぎる環境では思わぬ悪影響が出てしまうことがあります。

傷んだフードで食中毒になる可能性

湿気の多い時期は細菌が繁殖しやすい環境で、フードが傷みやすくなっています。傷みに気づかずにあげたフードを食べたペットが食中毒になってしまう可能性があるため、フードの管理にはいつも以上に気を配りましょう。
例えば、食べ残したフードは放置せずにすぐに片付け、カビや腐敗を防ぎましょう。特にウエットフードは傷みやすいため、最初から食べきれる分だけを出すか、使い切れない分は冷凍するなどのひと手間を掛けて保存しましょう。

消化器や呼吸器への負担

湿気が高いと消化器に負担がかかり、お腹を壊してしまうことがあります。また、冷えにも注意しましょう。蒸すためあまり寒さは意識しない季節かもしれませんが、梅雨どきは雨で気温が下がることも少なくありません。
夏の湿気は高い気温とともに息苦しさを生じさせることがあり、呼吸器に負担がかかります。人間でも「暑い・湿気が多い」という場所では息苦しさを感じますよね。ペットもそれと同様です。

ノミ・ダニ・カビの発生による皮膚病

湿気が高い時期はノミ・ダニ・カビの発生がほかの季節よりも多くなります。それらが原因でアレルギー性の皮膚疾患やアトピー性皮膚炎などを発症してしまうケースもあり、注意が必要です。
ペットが普段よりも身体を舐めたり噛んだりしている様子や、脱毛している様子などがあれば、早めにかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。

外耳炎になってしまうことも

ダニの中には外耳炎を発生させるものもあります。前述の通り、湿気はダニを増殖させる恐れがあるため、梅雨や夏場は普段よりも注意深くペットの様子を観察したほうがよいでしょう。
特に垂れ耳や長毛種のペットは要注意です。犬であればビーグルやゴールデンレトリバー、トイプードルなどは発症リスクが高いため、飼い主も注意してあげてください。

ペットが快適に暮らせる湿度はどれくらい?

ペットが快適に暮らせる湿度はどれくらいなのでしょうか。犬や猫をはじめ、ウサギやハムスター、ヘビなどが暮らしやすい湿度について見ていきましょう。

犬・猫

ノミ・ダニなどの発生を抑えられる湿度を意識しましょう。ノミ・ダニはおおむね60%以上の湿度になると活発に動くようになるため、ボーダーラインを60%にしておくと分かりやすいのではないでしょうか。
かといって、湿度が低すぎる環境もよくありません。脱水症状や皮膚の乾燥をまねく可能性があるためです。
犬の場合は40%~60%、猫の場合は50%~60%を目安に湿度をコントロールしましょう。これらはあくまで目安であり、愛犬や愛猫の年齢や毛のタイプ、体格などによって変わるため、様子を見ながら設定してあげてください。

ウサギ

ウサギは汗による放熱ができないため、飼い主が気をつけてあげなければいけません。快適な湿度は約60%と言われており、70%を超えると体調不良などの悪影響が生じる可能性があります。
このほか、長毛種のウサギは高湿度で毛が絡まりやすくなり、通気性が悪くなる恐れも考えられます。通気性が悪くなるとダニが居着き、皮膚炎になってしまうこともあるため、小まめなブラッシングも心がけましょう。

ハムスター

ハムスターに適した湿度は40%~60%です。湿度が高すぎるとやはりダニが発生しやすくなり、皮膚トラブルが心配されます。
また、ケージ内にカビが発生する恐れもあるため、湿気が多い時期は換気や除湿に気を使い、ケージの状態にも気を配りましょう。特に底や床材はカビが生えやすいため、注意深く観察するよにしましょう。

ヘビ

ヘビは45%~60%ほどの湿度で管理してあげてください。「毛がないんだから皮膚炎の心配はないのでは?」と思うかもしれませんが、空気中の細菌が増殖し、生活環境に影響が出てしまいます。
かといって乾燥しすぎもよくありません。ヘビは呼吸器があまり強くないため、湿度が低すぎると人間と同様に風邪を引いたりすることがあるのです。
湿気が高いときは除湿を、低いときには加湿をするなど、細かいコントロールをしてあげましょう。

快適な空間を作るために効果的な方法は?

快適な空間を作るためには湿度のコントロールが欠かせません。除湿アイテムやエアコンを適切に使用しながら、ペットが生活しやすい環境を作ってあげましょう。

除湿アイテムを活用しよう

室内の湿気をコントロールできるアイテムのひとつとして、除湿剤がおすすめです。スーパーやドラッグストアなどで手軽に買えるため、湿気の多い場所に置いてみてください。
ただ、除湿剤は体内に取り込むと体調への悪影響が心配されるものです。ペットが間違えて食べたり口に入れたりしないよう、飼い主がしっかり管理する必要があります。
除湿剤による事故が心配な人は、凍らせたペットボトルを部屋に置くのもおすすめです。冷やされた空気がペットボトルの表面に付着し、その分湿気が減ります。結露が出るため床濡れなどには注意しましょう。

エアコンの使用も適切に

エアコンに除湿機能があれば活用しましょう。電気代が心配な昨今ですが、無理のない範囲で使ってみてください。
また、エアコンはペットの熱中症防止にも効果的です。可能であれば24時間つけっぱなしにしておくと、ペットが快適に暮らせる空間を維持できるでしょう。
可能であればサーキュレーターや扇風機も併用して、空気を循環させると冷房効率が高くなるため、取り入れてみてはいかがでしょうか。

【注意】部屋を冷やしすぎないで!

エアコンで快適に湿気をコントロールしていると思っていても、室温を低くしすぎるのは要注意です。
部屋が冷えすぎ、「寒い」と感じたペットは、体温低下を防ぐために水分をとらなくなってしまい、脱水症状になる恐れがあるのです。
室温は22℃~25℃を目安にして、寒さを感じないようにコントロールしてみてください。これくらいの室温であればペットも飼い主も快適に感じられるでしょう。
傷みやすいウエットフードには乾燥剤を入れておくのもよい方法です。また、できるだけ冷蔵庫に保管して早めに食べきることを意識するようにしましょう。

湿気コントロールでペットと快適に季節を過ごそう!

梅雨や夏場の湿気には人間も辟易するものですが、自分で室内環境をコントロールできないペットもつらい季節です。湿気が多いと体調不良や病気になってしまうこともあるため、飼い主が適切にコントロールしてあげなければいけません。

ペットに快適な環境の多くは人間にとっても快適であることが多いので、ペットのための工夫のつもりが人間のためになるのも嬉しい一面です。
除湿アイテムやエアコンの除湿機能を上手に使いながら、快適な環境でペットと一緒に蒸し暑い季節を乗り切りましょう。

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知る・学ぶ 2024-05-29

睡眠時間で見る動物の生態! 種ごとの睡眠の違いと理由について

私たち人間にとって「睡眠」は欠かせないものですが、それは動物たちも同じです。睡眠時間は種によって大きく異なり、独特な眠り方をする動物も少なくありません。
そこで今回は、ユニークな睡眠パターンを持つ動物や、動物によって睡眠時間が異なる理由、そしてどの動物がどれくらい眠っているのかについてご紹介します。

特殊な睡眠パターンを持つ動物たち

動物界には私たちの知らないユニークな睡眠パターンを持つものが存在します。
ここでは、いくつかの興味深い眠り方の例をご紹介します。

イルカやクジラ、渡り鳥は「半球睡眠」をする

イルカやクジラは「半球睡眠」と呼ばれる特別な睡眠パターンを持っており、脳の片方が眠っている間、もう片方は活動を続けます。
これは地上での呼吸を確保しながら、水中で外敵に対する警戒を維持するためで、海洋哺乳類にとって生存に欠かせないメカニズムです。
脳の半分が起きている状態なので、片方の目で外部を警戒しながら眠れます。
また、渡り鳥も半球睡眠を行います。
長距離を何日間も休まずに飛び続けるためには完全に眠れないので、片側の目を閉じて脳を休ませながら、もう片側の目で視野を確保しているのです。

魚類は睡眠が浅い

魚類は、人間のように完全に意識を失う深い睡眠がないといわれており、活動量と代謝を下げて休息状態に入る状態を睡眠とみなされています。
ゆっくりとした呼吸になり、水流に身を任せて漂う、または水底近くでじっとしていますが、完全に意識を失っているわけではないため、危険を感じるとすぐに逃げられるのです。

カバは陸地と水中の両方で眠る

カバは水中と陸地で眠りますが、睡眠時間の比率は水中の方が多い傾向にあります。
昼間は主に水深の浅い場所や水草の茂みなど、外敵から身を守りやすい場所を選んで水中で過ごし、眠る際は呼吸をするために鼻だけを水面に出して眠ります。
夕方から夜間にかけては陸に上がり、草を食べながら休息しますが、この時に眠る場合がありますね。

コウモリは逆さまで眠る

コウモリは逆さまにぶら下がって眠ります。
逆さまで眠ることで、地上にいる外敵から見つかりにくくし、すぐに飛び立てる状態を維持しています。
また、コウモリは飛ぶために多くのエネルギーを必要とするため、逆さまから飛ぶ方がエネルギー消費を抑えられるからという理由もあります。
そして逆さまにぶら下がることで体温を一定に保ちやすくなるともいわれています。

ペンギンは立ったままでも眠れる

なんとペンギンは立ったままでも眠れます。
これは極寒の環境で体温を保つための適応で、足元にある羽毛のクッションが地面の冷たさを防ぐため、立ったままで休むと体温を効率的に保てるのですね。
ただ、この場合は熟睡ではなく短時間の睡眠になります。
水中でも短い休息を取ることができますが、こちらも完全な睡眠状態に入るわけではなく、休息のために動きを減少させる程度のものです。
寒冷地に住むペンギンは、体温を保ち、風や寒さから身を守るために「ハドリング」と呼ばれる集団で密集して眠るのが一般的です。

番外編「冬眠」について

冬の間、長期間の睡眠状態に入る「冬眠」を行う動物もいます。
冬眠をする目的はいくつかあり、食糧の少ない冬にエネルギー消費を抑える、活動量が低下している時期に外敵に見つかりにくくする、冬眠によって出産時期を調整するなどが挙げられます。

睡眠時間が長い動物と短い動物

動物の睡眠時間は種によって大きく異なります。
ここでは、特に睡眠時間が長い動物と短い動物、そしてその理由について詳しく見ていきましょう。

睡眠時間が長い動物

まず、長時間睡眠で有名なのは「コアラ」です。
コアラは一日に最大18~22時間もの時間を眠りに費やしますが、これほど長時間の睡眠を必要とする理由は彼らが食べるユーカリの葉にあります。
実はユーカリの葉は毒素を含んでいるため、その解毒に時間がかかるのです。
さらにユーカリは栄養価も低いため、コアラはエネルギーを節約するために多くの時間を睡眠に当てています。

ナマケモノの睡眠時間も長く、一日に15~20時間眠りますが、この理由は代謝が非常に遅く、エネルギー消費を抑えるために睡眠時間も長くなりやすいからだといわれています。
コウモリも一日に約16時間眠りますが、エネルギーの節約と体温調節のために長時間の睡眠を必要とします。
また、意外に思われるかもしれませんが、ライオンも一日に多くの時間を眠ります。
これは狩りで大量のエネルギーを消費するためで、長めの睡眠をとって体力を回復させるのです。

睡眠時間が短い動物

短時間睡眠の代表的なものは「キリン」で、一日に約2~4時間しか眠りません。
20分前後の睡眠を繰り返しますが、これは外敵からの危険を避けるためで、キリンは立ったまま常に警戒をして眠っているのです。
また、高い視点から広範囲を見渡せるため、危険を早期に察知できます。

馬も一日に約2~3時間しか深い睡眠を取りません。
キリン同様に短い昼寝を数回行い、必要な睡眠時間を補っていますが、こちらも外敵からの攻撃を避けるためです。
群れでいる時は、他の仲間と交代をしながら、うつ伏せになって深い眠りを取ります。
野生の象も一日に約2~4時間しか眠らないことが知られていますが、飼育下では長時間眠る傾向にあります。

中間層の動物

年齢や品種によって異なりますが、犬や猫の睡眠時間は一般的には12~16時間ほどです。
比較的、猫の方がより睡眠時間が長い傾向にあり、特に家猫は安全な環境だとリラックスして長時間の睡眠を取ります。
夜行性であるフクロウは、昼間に約8~10時間睡眠を必要とします。

睡眠時間の違いの理由

上記のように代謝や食性、外敵の存在などの環境要因が睡眠時間に影響を与えますが、外敵が多い環境では短い睡眠時間である動物が多いです。
また、草食動物は消化に時間がかかり栄養価の低い草を食べ続けなければならないため、必然的に起きている時間が長くなります。
逆に、高代謝率の動物や栄養価の高い食物を摂取する動物は、比較的短い睡眠で済む傾向にあります。

主な動物別の睡眠時間

動物の睡眠時間は種によって大きく異なることは解説しましたが、以下に主要な動物の平均睡眠時間を一覧にまとめました。

コアラ【一日18~22時間】
ナマケモノ【一日15~20時間】
馬、キリン、象【一日約2~4時間】
カバ【一日約4~6時間】
コウモリ【一日約16~20時間】

ライオン【一日約13~16時間】
犬、猫【一日約12~16時間】
フクロウ【一日約8~10時間】
渡り鳥【一日数分~1時間(飛行中に短い睡眠)】
イルカ、クジラ【一日約8時間(半球睡眠)】

カモノハシ【一日約14時間】
アルマジロ【一日約18~19時間】
ハリネズミ【一日約10~12時間】
ハト【一日約10時間】
カラス【一日約9時間】

ペンギン【一日約10時間】
カメレオン【一日約12時間】
ワニ【一日約17時間】
アマガエル【一日約12時間】
サメ【一日数時間(不規則)】

睡眠時間を頭に入れて観察してみよう

動物たちの睡眠時間とその理由について、新しい驚きや発見はありましたでしょうか。
人間と同じように、動物たちにもそれぞれの生活スタイルや生態に合った睡眠の取り方があるのです。睡眠だけ見ても、動物たちがどれだけ賢くて適応力が高いかが分かりますよね。
もし次に動物園や自然の中で動物たちを見かけたときには、この睡眠習慣についても思い出してみて下さい。特に睡眠時間が長い動物が起きている姿は必見ですよ!

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楽しむ 2024-05-22

思わずほっこり、思わず涙…動物が活躍する本で読書タイムを楽しもう!

小説や児童文学の世界でも愛される動物たち。心揺さぶるような名作、大人になっても忘れられない物語…さまざまな作品が文学の世界を彩ります。
動物が登場する物語は子供向けが多い印象ですが、大人向けの読み応えある小説も数多いため、読書を楽しみたいときにはぜひ手にとってみてください。

今回は、大人も楽しめる小説や、子供の頃の気持ちを思い出させてくれる児童文学など、動物が登場する作品についてご紹介します。

大人も楽しめる動物小説5選

「いくつになっても動物が大好き」「我が家のペットもかわいいけれど、作品の中で活躍する動物が見てみたい」。そんな大人におすすめする動物小説5選をご紹介します。

「旅猫リポート」有川浩(著)/講談社

猫の目線から描かれる人間社会が印象的な小説です。2018年には福士蒼汰さん主演の映画も公開され、多くの人々の心をつかみました。
1匹と1人で楽しく暮らしていた元野良猫のナナとサトル。しかし、ある事情によってサトルはナナと別れる選択をします。ナナはサトルとともに銀色のワゴンに乗り、新しい飼い主を探しに旅立ちましたが…。
旅の途中に出会う人々との交流や美しい風景の描写が、読者も一緒に旅行をしているような気持ちにさせてくれる小説です。やがて明かされるサトルの秘密を知ったとき、思わず「嘘でしょ」と声が出るかもしれません。

「犬がいた季節」伊吹有喜(著)/双葉社

2021年の本屋大賞第3位を獲得し、当時話題を呼んだ小説。著者・伊吹有喜さんの母校を舞台にしたこの作品は実在した犬をモデルにしており、犬の視点を通して高校生の青春を描きました。
18歳ならではの悩み、友情、恋愛など、その時代にしか経験できない日々。昭和、平成、令和まで、オムニバス形式でさまざまな高校時代が鮮やかに描写されます。
読む年代によって、共感や追憶などそれぞれの楽しみ方ができる秀逸な小説です。

「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」トム・ミッチェル(著)、矢沢聖子(訳)/ハーパーコリンズ・ジャパン

年若い牧師と1匹のペンギンが親友になるまでを追った実話です。言葉が通じなくてもいつしか通い合うふたりの心の交流にぐっとくる人も多いかもしれません。
重油にまみれ、息絶えた数百羽のペンギン。そのなかでただ1匹生き残ったペンギンを保護したトムは、ペンギンを「フアン・サルバドール」と名付け、学校の屋上で飼うことにしたのですが…。
ペンギンの賢さやトムの思慮深さ、ふたりの間に生まれる友情。心ゆさぶられるようなラストシーンは涙なくしては読めません。

「ありがとう実験動物たち」太田 京子 (著)、笠井 憲雪 (監修)/岩崎書店

人間社会を支えてくれる一面に動物実験があります。なぜ動物実験が必要なのか、その動物に心を寄せたことはあるのか…。実験動物を世話する女性を追ったノンフィクションです。
人間の健康はそれに関わる動物や人々のおかげで保たれていることも確かな事実です。その動物の毎日を支えるために働く女性・テルは、どのように動物に接しているのか…。
デリケートなトピックを扱っていますが、読後感は決して悪いものではなく、社会を支えてくれる動物たちに改めて心を向けたくなる1冊です。

「動物農場」ジョージ・オーウェル (著)、高畠 文夫 (翻訳)/角川文庫

1945年に刊行された小説で、とある動物農場を通して当時の社会情勢を描いた小説です。文豪ならではの筆力が寓話の世界にリアリティを与え、パワフルな空間を描き出します。
とある農場の動物たちは、劣悪な環境を強制する農場主にうんざりし、反乱を起こして追い出してしまいました。これで理想的な環境になると思ったのもつかの間、リーダーの豚が独裁者になってしまい…。
当時の社会を風刺した小説ですが、歴史好き・動物好きの両方に訴える秀逸なストーリーです。

子供も一緒に楽しめる動物の児童文学4選

動物が登場する本といえば、やはり児童文学は欠かせません。幼い頃に読んでいた思い出の1冊、家族で一緒に読みたい1冊などの4選をご紹介します。

「長靴をはいた猫」シャルル・ペロー(著)/福音館書店・他

賢い猫が少し頼りない飼い主をあれよあれよと言う間に出世させる物語。幼い頃に読んだことがある人も多いのではないでしょうか。
亡くなった粉屋の親から遺産を相続した3人の息子たち。上の2人はよいものをもらったというのに、末息子が手にしたのはたった1匹の猫だけでした。がっかりする末息子ですが、賢い猫の言う通りにしてみると…。
猫の活躍で立身出世の道を駆け上る飼い主の姿は見事なものです。そんな賢さ持つ猫を見て、思わず自分の愛猫に「あなたも?」と話しかけたくなってしまうかもしれませんね。

「今泉先生のゆかいな動物日記」今泉忠明(著)/KADOKAWA

動物学者の今泉先生が日々の研究について紹介する1冊です。「研究を紹介する」というと堅苦しく感じますが、小説よりも波瀾万丈の毎日に思わずクスッとしてしまいます。
学者なら机に向かってたくさんの文献を読んで…と思いきや、今泉先生はとてもアクティブです。ミノムシを集め、動物にお弁当を奪われ、ときにはクマに遭遇することも…。
毎日大変ですが、刺激と笑いの絶えない日々の描写はいつの間にかページをめくるおもしろさに満ちています。イラストもかわいらしく、読書が苦手な人にもおすすめです。

「ハニーのためにできること」楠章子(著)/童心社

祖母との別れ、老犬の寿命と直面した家族たちが送る日々の物語。命と向き合い、命とは何かを考えるときに手に取りたい1冊です。
ふたばの祖母が突然亡くなり、残された老犬・ハニーを引き取ることに。はじめはぎこちない関係でしたが、やがて打ち解け、信頼関係を築けるようになりました。しかし、ハニーは重い病気にかかってしまいます。近づく別れにふたばや家族たちは「何ができるだろうか」と懸命に考え…。
動物と暮らす人が必ず直面する命の「終わり」だけではなく、「何ができるか」にフォーカスした物語です。児童向けですが、大人も深く考えさせられるのではないでしょうか。

「シャーロットのおくりもの」E.B. ホワイト (著)/あすなろ書房

クモのシャーロットと子ブタのウィルバーの交流を描いたハートフルストーリー。世界23カ国で翻訳され、4500万人の人が手に取った名作です。
子ブタのウィルバーは牧場でのんびり暮らしていましたが、ある日、いずれはハムにされてしまうことに気づきます。自分の運命に悩むウィルバーを、クモの女の子・シャーロットが助けてあげようとするのですが…。
シャーロットの賢さで人間を翻弄するシーンや、友情が深まっていくシーンなど、ほどよい波のあるストーリーが笑顔にさせてくれます。ふたりの友情の行く末が気になりますね。

文字が織りなす世界で動物との時間を楽しもう

映画やドラマでも動物が活躍する作品は多々ありますが、小説や児童文学のなかで活躍する動物たちもいとおしいものです。
文字が紡ぎ出す光景を想像すれば、笑顔になったり、涙をぬぐったりする時間が楽しめます。1人で、家族で、ぜひお気に入りの1冊を見つけてみてください。

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知る・学ぶ 2024-04-25

人間との関わりも深い「馬」の生態や生活スタイルについて

馬は古くから人間の生活に欠かせない存在であり、交通手段、農業、スポーツなど、様々な面で重要な役割を果たしてくれています。
一方で、馬の生態や生活スタイルについては実はあまり知らないという方も多いのではないでしょうか?

馬はどんな動物?

馬は生物学で「哺乳綱奇蹄目ウマ科ウマ属」というグループに分類されており、群れで生活します。
このグループにはロバやシマウマなどがいて、姿形がよく似ていますよね。
奇蹄目にはサイやカバも属していますが、体が重くて水中での生活に適していることや、単体で行動する点が異なります。

馬は大きな体と力を持っていますが、温和で友好的な草食動物で、攻撃的でない性格が多くの人々に人気がある理由の一つとなっています。
ただ、そのような性格がゆえに細かな環境の変化に敏感で、突然の動きや予期せぬ音に反応して驚いてしまう場合があるのです。
このため、馬は安定した環境と予測ができる暮らしを好み、信頼できる人間との関係を大切にします。

この臆病で敏感な性格は、馬が持つ「逃げる」という本能に直結していて、危険を感じた際には戦うよりも逃げるという手段を選ぶという、野生の環境で生き残るための戦略から芽生えたものです。
人間はこの本能を理解し、適切なトレーニングとケアを提供しており、馬との深い絆を築いています。

馬の特性について

体の大きさ

馬の体の大きさは、種類によって異なります。
最も小さい種類の馬は、成長しても体高が約76センチメートルから97センチメートルほどにしかなりませんが、大型の馬は体高が160センチメートルを超えることも珍しくありません。
体重も幅広く、約150キログラムから1,000キログラム以上まで様々です。

種類

馬はスポーツ、農業、レジャーなど、人間の様々なニーズに応じてくれていますが、体の大きさと同様に、種類によって性格や学習能力、適応能力が異なり、作業の向き不向きがあるのです。
例えば、競馬に最も一般的に使用される種である「サラブレッド」は高いスピードと持久力を持ち合わせており、「アラビアン」は耐久力が高く、長距離の競技や乗馬に向いています。
「クォーターホース」という短距離のスプリントやロデオ、乗馬に優れている種も存在しますね。
競走馬以外では、「シャイア」という重い荷物や馬車を引くのに適した大型の馬や、独特の斑点が特徴的で主に牧場作業などで活躍してくれる「アップルーサ」が代表的な種です。
他にも個性的な馬が多くいるので、興味があればぜひ図鑑などで詳しく調べてみて下さいね。

視力と聴力

馬の視力は、人間と比べると物を鮮明に見るという点ではやや劣るものの、動体視力が優れており、広範囲を警戒するのに適した視界を持っています。
視界は、目が頭部の側面に位置していることから、ほぼ死角のない約350度に及び、捕食者に対して迅速な対応が可能です。
特に黄色、緑、青を識別する能力に長けており、これは食べ物の探索や他の馬とのコミュニケーションに役立ち、紫外線も感知できるため、夜間の視認性が高いことでも知られています。
その一方で、赤色の識別が難しいとされていますが、これは低照度環境や夜間の視認性に適応しているためです。

そして馬の耳は非常に柔軟で、最大約180度の回転が可能です。
この能力は遠く離れた場所からの音や、地表を伝わる微小な振動を感知し、超音波も聞き取れるため、視覚と合わせて捕食者などの脅威をいち早く察知するのに役立ちます。馬を観察する際は、ぜひ耳の動きにも注目してみて下さい。

嗅覚

嗅覚も他の感覚と同様かなり発達しており、人間と比べて約1,000倍の感度を持っているといわれています。
この嗅覚を利用して自分の子供や他の群れのメンバーを識別したり、食物の新鮮さや品質を判別したりと、多くの情報を得ているのです。
また、特定の人間の匂いを覚え、安心感や親近感を覚える能力もあり、それが飼育者やトレーナーと良い関係を築ける理由にもなっています。

寿命

馬の寿命は、品種、飼育環境、健康管理など様々な要因によって大きく異なりますが、大型馬よりも小型馬やポニーのような品種の方が比較的長生きする傾向にあります。
平均寿命は約20年から30年ですが、最も長いものではイギリスの「オールドビリー」という馬が、なんと62歳まで生きた例があります。
飼育下で寿命を延ばすためには、獣医による定期的なチェック、適切な餌と水やり、適度な運動が必要で、清潔で安全な環境にいる馬はストレスが少なく、健康的な生活が送れるため、長生きする可能性が高まります。

馬の生活スタイル

食性と好物

馬は前述したとおり草食動物です。
草や干し草を主食としているため、消化器系は草類を効率よく消化するよう進化していますが、果物などの甘いものに対しても好みを示します。
馬の好物と言えば「ニンジン」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
よく物語やアニメなどの描写にもあるように、実際にニンジンをご褒美として使い、訓練やケアの際の動機付けとする場合があります。
その他、穀物を活動的な馬や競走馬のエネルギー源として与えられるケースも多いですね。
馬の食事は、年齢、体重、健康状態、活動レベルに合わせて調整し、慎重な管理が必要です。

睡眠パターン

一般的に馬の総睡眠時間は1日に約3時間程度とされており、これは他の哺乳類と比較してかなり短い部類に入ります。
この短い睡眠時間は野生の環境に適応した結果であり、敵からの攻撃を避けるために長時間の深い睡眠を取らないようにしているのです。

睡眠時の姿勢は大きく分けて二つあり、一つ目は立ったまま睡眠をとる「立ち寝」と呼ばれるもので、立った状態で軽い眠りにつきます。
立ち寝はとても浅い睡眠で、いつでも素早く起きて逃げる準備ができるという姿勢です。
二つ目は、地面に腹這いになって眠る「伏せ寝」というもので、深い睡眠をとる際に見られる姿勢です。
この睡眠は身体の回復に不可欠ですが、伏せ寝は立ち上がるのに時間がかかるため、安全で落ち着いた環境でのみ行われます。
群れでの生活をする中で、他の個体が周囲を警戒している間に安心して伏せ寝をするのです。

馬の行動とコミュニケーション

馬は通常、穏やかで友好的な動物ですが、ストレスや不安を感じる状況では稀に攻撃的な行動をとります。
特に、噛む行動は警告や自己防衛として、蹴る行動はより直接的な脅威に対する強い反応として起こり、これらの行動を示す時は、何らかのストレスや不安、不快感を覚えているサインである可能性が高いです。

私たち人間と馬の接触においては、適切な関わり方を理解し、安全のために注意を払うのが重要で、馬を驚かせないよう、特に大きな音や突然の動作は避けましょう。
馬は視界が広いものの、直接背後を見られないため、死角からの接近を避ける必要があり、接近する際は前方からゆっくりと近づくことが望ましいですね。
また、人の感情や意図を感じ取れるとされているため、触れ方や声のトーンなども穏やかで安心させるように接するよう心掛けましょう。

飼育者やトレーナーはこれらの行動原則を理解し、馬が感じるストレスを最小限に抑えて関係を構築しています。
馬の社会的特性に合った教育方法を実践することで、人間と強い絆を持つパートナーとして成長してくれるのです。

馬と直接関わりを持ってみよう

このように馬は元々、野生の中で群れで生活する社会的な動物でしたが、今では私たち人間の生活にとって欠かせない存在となっていますよね。
ただ、その一方で現在では野生の馬がいなくなってしまい、保護活動の一環として野生に返すプロジェクトも行われています。

日本では、乗馬クラブや地域の農場を通じて直接触れ合えるので、興味があればぜひ訪れてみて下さい。
馬との交流は、新しい感動や発見があるかもしれませんよ!

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