人間だけじゃない? 道具を使う動物たち

道具を使うのは人間だけでなく、チンパンジーやカラス、ラッコなど、多くの動物が自然の中で工夫をこらして道具を活用しています。
例えば、チンパンジーは木の枝を削ってシロアリを釣り出したり、カラスは硬い木の実を車道に落として車に割らせたりしているのです。

今回は、道具を使う動物たちの特徴や実例についてご紹介します。

道具を使う動物とは?

人間のようにハンマーやナイフを使う動物はいませんが、葉っぱや石、小枝などを使って生活を便利にしています。
哺乳類の中でも霊長類は特に道具の使用能力が発達しており、観察や学習によって高度な技術を身につけ、鳥類ではカラスやオウムが柔軟に道具を使用しているのです。

また、道具を使うだけでなく、それを改良したり、新しい方法を生み出したりする思考も持っています。
道具を使う動物は一般的に知能が高いと考えられていますが、その理由は「問題解決能力」と「学習能力」が必要だからだと考えられています。

哺乳類の道具使用

哺乳類の中では、チンパンジーやオランウータンが環境に応じた道具使用を行い、食料を得たり、身を守ったりする工夫をしています。

チンパンジーの道具使用例

チンパンジーは霊長類の中でも特に道具を多用する動物として知られており、単に木の枝や葉を使うだけでなく、それらを加工して目的に応じた道具にすることもあります。
チンパンジーが棒を使ってシロアリを捕まえる姿は、最も有名な道具使用の例で、木の枝を適切な長さに折り、葉を取り除いて細長い棒を作ります。
そして、その棒をシロアリの巣穴(蟻塚)に差し込むと、シロアリが棒に群がってくるため、簡単に引き出して食べられるのです。この技術は学習によって受け継がれ、若いチンパンジーが親の行動を観察しながら習得する様子が確認されています。

また、アフリカの一部の地域では、チンパンジーが石をハンマーのように使い、硬いナッツの殻を割る行動が見られます。適切な大きさと形の石を選び、台となる岩の上でナッツを固定しながら叩くという高度な技術です。

さらに、水を飲む際に、葉っぱを丸めてスポンジのように使います。水が溜まったくぼみに直接口をつけるのではなく、葉っぱを水に浸して吸収させて口に運ぶという方法です。この行動は、葉の種類や形状を理解し、それに適した用途を見つける知能の高さを示しているといえるでしょう。

オランウータンの道具使用例

オランウータンも環境に適応するための道具使用が観察されています。
熱帯雨林に生息するオランウータンは、頻繁に雨にさらされるため、大きな葉を折りたたんで頭の上にかぶり、雨具のように使うことがあるのです。
これは一時的に雨をしのぐための行動であり、適切な葉を選んで使い分ける柔軟な思考が必要になります。

また、チンパンジーと同様に葉をスポンジのようにして水を飲みますが、それだけでなく小枝を使って水たまりの底を掘ったり、木の幹にたまった水をすくい出したりする工夫も見られます。
さらに、手の届かない果実を食べるために細長い枝を使って実を落とすこともあり、適切な長さの枝を選び、場合によっては枝の先を折って形を調整するなど、道具を加工する様子も観察されているのです。

ゴリラの道具使用例

ゴリラは、チンパンジーやオランウータンと比べると道具を使う頻度は少ないですが、それでも環境に応じた道具を使用します。
野生のゴリラが小川を渡る際に、長い棒を使って水の深さを確認する行動が観察されており、環境を分析しながら道具を活用する能力だと言えるでしょう。

また、大きな葉を手に持ちハエを追い払うこともあり、これは人間がうちわや扇子を使うのと同じような行動で、特定の目的のために道具を使い分ける能力を示しています。

カラスやオウムの知恵

鳥類は哺乳類に比べると知能が低いと思われがちですが、実際には驚異的な知能を持つ種が存在します。
特にカラスやオウムは、道具を使う能力が非常に高く、人間が思っている以上に高度な問題解決能力を持っているのです。

カラスの道具使用例

カラスは、鳥類の中でも特に知能が高く、その中でも最も有名なのが「針金を曲げてフックを作る」行動です。
まっすぐな針金を自らのくちばしと足を使って曲げ、フックの形にした後、それを使ってエサを取り出したという実験結果があります。
この行動は事前に教えられたわけではなく、カラス自身が状況を判断し、試行錯誤の末に導き出したものでしょう。
これはカラスが「道具を作る能力」を持っており、単に道具を使うだけでなく、目的に合わせて加工できる知能の高さを証明しています。

また、クルミの硬い殻を割るために、適切な高さからクルミを車道に落とし、車が通過した後に割れた実を回収するという行動も見られます。
信号機の変わるタイミングを理解し、車の少ないタイミングで回収する行動も確認されており、この行動は学習の結果として広まっていると考えられているのです。

さらに、野生のカラスは小枝を使って木の穴や隙間にいる昆虫を取り出しますが、これは特定の地域のカラスに限られたものではなく、世界中のカラスの仲間で観察されています。
カラスによっては枝の先をかじって尖らせ、より使いやすい形に加工する個体も見られ、環境に応じて柔軟に活用する能力を持っていることがわかります。

オウムの道具使用例

オウムもまた、道具を使う能力が高い鳥類で、興味深い道具使用の実験結果が報告されています。
エサの入った箱の中に長い棒を差し込んで、エサをかき出す方法をすぐに学習したため、これは状況に応じて道具を選択し、加工する能力があるという証明となりました。
また、硬い殻のついたナッツや果実の種を割るために、適切な硬さの石や木片を使い、一度使った道具を再び使う個体も観察されていて、道具の価値を理解している可能性があります。

海の動物の知性

海にも知能が高いとされる動物が多く生息しています。
その中でもイルカやラッコは有名で、海という特殊な環境の中で生き抜くために様々な工夫をしながら食料を確保し、危険を避ける行動をとります。

イルカの道具使用例

イルカは海に生息する動物の中でも特に高い知能を持ち、社会性が強いことで知られており、複雑なコミュニケーションをとるだけでなく狩りの際に道具を使う行動も観察されています。
その代表的な例が、「海綿(スポンジ)を使った狩り」です。

シャーク湾(オーストラリア)に生息するバンドウイルカの一部は、狩りの際に海綿をくちばしにつける習性があり、この行動は「スポンジ狩り(スポンジング)」と呼ばれ、特に母から子へと受け継がれることで知られています。
海綿を使う理由は、海底の砂の中に隠れている魚を探すためで、砂を鼻先でかき分けながら獲物を探す際に、くちばしが傷つかないように海綿をバリアとして使用します。
この行動によって、他のイルカが手を出せないような場所からも獲物を捕まえられるのです。

ラッコの道具使用例

ラッコは海洋哺乳類の中でも特に道具を頻繁に使う動物で、代表的な例が「石を使って貝を割る」行動です。
貝類を主食としており、特にアワビや二枚貝を好んで食べますが、貝の殻は非常に硬いため、簡単には開きません。
そこで、適切な大きさの石を拾い、お腹の上に乗せてハンマーのように貝を叩き割ります。
この行動は道具使用の中でも特に高度なものであり、単に手に持って使うだけでなく「お腹の上に道具を固定する」という点が特徴的で、人間が作業台を使うのと同じような考え方だと言えるでしょう。

ラッコは、適切な石を見つけると、それをいつでも使えるように脇の下にある皮膚のたるみに収納します。
つまり、「お気に入りの道具」を持ち歩く習性があるのです。
この行動は他の動物には見られない特徴であり、ラッコの高い知能の高さが伺えます。

興味があれば実際に観察してみよう

このように、動物たちの中には道具を使用して効率的に生活する種が数多く存在しています。
今後の研究によって、新しい発見があるかもしれませんし、今まで知られていなかった道具使用の例が見つかる可能性もあるでしょう。
もし、動物たちが道具を使用する行動に興味があれば、ぜひ動物園に行って観察したり、実際の映像をチェックしたりしてみて下さい!

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