カメは多くの動物園や水族館で飼育されており、種類によってはお祭りの屋台などでも見かけることもあるくらい、身近で馴染み深い動物の一種です。
カメには家庭で飼える種が複数存在しますが、飼育するにあたっては種に応じた飼育方法とケアが必要です。
今回はカメの基本的な知識や種類、飼育方法についてご紹介します。
カメは爬虫類の一種で世界中に多様な種が存在しています。
種によって独自の特徴があり、生態や習性、飼育環境や食生活が異なります。
カメは硬い甲羅を持っていますが、これは主に捕食者から身を守る重要な防御機能の役割を果たしています。
この甲羅は骨格の一部で、肋骨が発達して形成されています。
また、冷血動物であり、外部環境の温度によって体温が変化するため、飼育下では温度管理が非常に重要です。
カメは大きく分けて、「水棲」「陸棲」「半水棲」に分類されます。
水棲のカメは水中での生活に適応しており、水槽や池で飼育します。泳ぎが得意で、水中でしか食事を摂らない種が多いです。
陸棲のカメは陸上での生活がメインで乾燥した環境を好み、水分は基本的に食物から摂取します。
半水棲のカメは水地と陸地の両方で生活し、家庭飼育用のカメのほとんどがこれに属します。
種によって草食、肉食、または雑食と幅広い食性を持つことが特徴です。
カメの寿命は種によって異なるものの、20年以上であることが多く、長寿の動物に分類されます。
適切なケアと環境を与えれば、100年以上生きる種がいることが報告されています。
カメの飼育は特に初心者の場合、飼育しやすい種を選ぶことをおすすめします。
最も身近に飼育される「ミドリガメ」と呼ばれているカメは、正式名称を「ミシシッピアカミミガメ」と言い、特徴的な赤い斑点が耳の後ろにあることが名前の由来です。
ミドリガメという愛称は、幼い時期の甲羅が緑色であることが由来となっています。
成熟すると約25cmの大きさになり、寿命は30年ほどです。
水中での生活を好みますが、定期的に陸地での日光浴も必要なため、水槽には日光浴用の陸地エリアを設けましょう。
雑食性で、市販のカメ用フード、果実、野菜、小さな魚や昆虫を食べます。
幼少の時期に「ゼニガメ」の愛称で親しまれている「クサガメ」は、流れが遅い水域を好んで生活しています。
平均寿命は20年ほどで、成長すると30cm以上の大きさに達することもあります。
飼育環境は大きな水槽に加えて、流れを作るためのフィルターシステムが必要です。
食性はミシシッピアカミミガメと同様に雑食性です。
日本固有のカメである「ニホンイシガメ」は頑丈さと適応性の高さで知られており、平均寿命は20年、最大で約20cmの大きさと、やや小型の種になります。
静かな水域を好み、水中と陸上の両方で活動します。こちらも雑食性の食性を持ちます。
陸棲カメである「ヘルマンリクガメ」は、ドーム型をした甲羅の愛らしさで人気があります。
平均寿命は30年、大きさは成熟すると約20cmから30cmほどになります。
野生では温暖な気候を好み、草地や低木の多い地域に生息しており、飼育下では温度と湿度の管理が大切なポイントで、特に冬季の寒冷時には保温設備が必要です。
雑食性の上記3種と異なり草食性で、野菜、草、花などを食べます。
栄養ドリンクなどのエキスで馴染み深いカメの仲間「スッポン」も飼育しやすい種の一つです。
ただ、一度噛みついたら離さないという習性を持っているため注意が必要です。
平均寿命は25年、大きさは成熟すると30cmを超えることもあります。
水中での活動が多く、砂や泥の底で生活することを好むため、水深のある広い水槽の底に砂や泥が必要です。
肉食性で、魚や昆虫、市販の肉食性カメ用フードを食べます。
これらのカメは比較的飼育しやすいとされていますが、飼育する前に特性をよく理解し、適切な環境を整えましょう。
カメの飼育において最も重要な点は、自然に近しい生活環境を作ることです。
種によって整える環境は異なりますが、主に水槽やテラリウム(陸上の生物を飼育するケース)の選定、温度・湿度の管理、照明の設定が必要です。
特に水質の管理は重要で、定期的な水の交換とフィルターの使用をおすすめします。
水棲カメと陸棲カメでは必要とされる水槽やテラリウムが異なります。
水棲カメのための水槽は自由に泳げる十分な大きさが必要です。水量はカメの大きさに比例して広いものを用意し、フィルターを設置して水質を保ち、定期的な水の交換をしましょう。
陸棲カメ用のテラリウムは、乾燥した地域を好むカメのために砂や土を敷き詰め、隠れ家や日光浴用の岩を設置します。この際、十分な陸地部分に加えて小さな水域も作成して下さい。
カメは体温を維持するために環境温度が非常に重要です。
水棲カメの場合、一般的には25~28℃の水温が適切で、水槽ヒーターを使用して一定の温度を保ちます。
陸棲カメの場合、温度はおよそ30~33℃の範囲、湿度は種によって幅が大きく、ヒーターや加湿器を使用して管理します。
カメは日光浴を行うことで甲羅を形成するビタミンDを吸収するため、室内では適切な照明を用意しましょう。
この場合、自然の日光に含まれる紫外線を模倣したUVB照明を使用します。
水槽やテラリウムを温めるために、熱ランプやヒートマットを使用しましょう。
そうすることで、カメは体温を調整するための熱帯部分と冷帯部分を自由に行き来できます。
これらの環境設定を適切に行うことで、カメは健康的に生活できます。
カメの健康を保つためには、適切な食事と栄養は不可欠です。飼育するカメに応じた食事を与えましょう。
まず、食事の頻度は年齢によって変わり、成長期のカメは毎日、または一日おきに食事を必要とし、成熟したカメは数日に一度の食事で十分であることが多いです。
過剰な給餌は肥満を引き起こす可能性があるため、適量を与えるようにして下さい。
栄養素については、カメの骨格と甲羅の健康を維持するためにはカルシウムが不可欠で、不足すると甲羅の弱化や骨の問題を引き起こす可能性があります。
タンパク質も成長期のカメにとって重要な栄養素で、特に肉食性または雑食性のカメには必要です。
バランスの取れた食事と栄養を提供することが健康的な成長と長寿に繋がります。
カメは比較的病気にかかりにくいペットですが、不適切な飼育環境や栄養不足が原因で病気になるケースや、健康に問題が生じることがあります。
まずは上述してきたような温度、湿度、照明など、カメに適した環境を維持することが重要です。
特に水質の悪化は水棲カメにとって重大な健康リスクを招きます。
甲羅はカメの健康状態を反映し、割れや変形、異常な柔らかさなどがみられた場合、カルシウム不足や病気の可能性があります。
目やにや鼻水など、目や鼻の周りに異常が見られる場合はビタミンAの不足が疑われます。
食欲不振や活動量の低下も健康問題の兆候である可能性があります。異常がみられた場合は獣医師に相談しましょう。
またカメは静かな環境を好み、騒がしい環境はストレスになる可能性があるため、穏やかで安定した環境を提供して下さい。
ストレスや恐怖を感じると甲羅の中に頭や四肢を引っ込めて隠れてしまいます。
そのため、カメに触れる際は急な動きを避け、ゆっくりと静かに接近し、隠れた場合は甲羅から出てくるまでそっとしておきましょう。
カメの飼育は正しい知識を持ち、しっかりとケアができれば、楽しく充実したものとなるでしょう。
長寿である特性を活かせるように環境を整えて、ぜひ長く一緒に過ごして下さい!