人間と動物の関係を語るうえで欠かせない動物の一つ、ニワトリ。食を支える家畜として5000年以上もの歴史を持ち、今現在も世界中で飼育されている動物です。
そんなニワトリが最近、ペットアニマルとしても人気を集めているのをご存知でしょうか?
すでにテレビや動画サイトで室内飼いされている人懐っこいニワトリを見て、「ニワトリを飼ってみたい」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
その反面、「家畜を室内飼いするのは難しいのでは?」と迷う気持ちもどこかにあることでしょう。
この点、結論から言ってしまうと、ニワトリはとても良く人に懐きますが、動物慣れしていない方が飼うにはハードルが高いと思われる点がたくさんあるため、初心者向きではありません。
つまり、ニワトリを室内飼いするのであれば、「それなりの覚悟」が必要になるということ。
そこで今回は、ニワトリを室内飼いするときの注意点やニワトリの習性・性格、飼育に適した品種についてご紹介します。
ヒヨコから成長したニワトリは、ヒヨコ時代のかわいらしさからは想像もできないほど強気な性格になります。もちろん個体によりますが、ニワトリは非常に好戦的な動物であることに間違いなく、それはオス同士を戦わせる闘鶏(とうけい)が存在していることからも明らかです。
こう言うと「それだったらペットにしても懐かないのでは?」との声が聞こえてきそうですが、安心してください。人の存在に慣れ、「危険じゃない」とわかれば自然と寄り添ってくれるのです。
また、ニワトリは賢い動物でもあり、愛情をこめてしっかりお世話してあげればちゃんと理解してくれます。
ただし、ニワトリのあの「コケコッコー!」という鳴き声には参ってしまうかもしれません。大きな声で鳴くのはオスなので、都市部の集合住宅で室内飼いをする場合はメスを選びましょう。
また、ニワトリは鋭い爪で邪魔とみなしたものを蹴散らす習性があります。
蹴られると飼い主さんが怪我してしまうので、食事中にちょっかいを出したり、むやみやたらに羽を触ろうとしたりして、ストレスをかけないように注意してください。
そして、ニワトリの社会には序列があります。複数羽飼うと序列ができていじめが起き、仲間を傷つけてしまうこともあるため、最初のうちは一羽だけにとどめておいた方が良いでしょう。
ニワトリは、ヒヨコの頃から育てることで人に懐き、歩く人の後ろをついてきたり、肩に乗ったりするようになります。「ニワトリがここまでかわいいとは思わなかった!」と語る飼い主さんが多いのも頷けますね。
しかし、ただ「かわいい」という理由だけで室内飼いを始めてしてしまうと、後々さまざまな問題に悩まされる可能性があります。
したがって、ニワトリの室内飼いを検討している方は、次のような点に注意しましょう。
ペットを飼う上でトイレ問題は重要な課題です。ニワトリはトイレのしつけができないため、どこでも糞をします。室内で放し飼いにすると、大切にしている物まで汚されてしまうことが多々あるので、ケージから出して遊ばせるときはニワトリから目を離さないようにしましょう。
また、ニワトリは「盲腸便」という水分を多く含む泥状の糞をしますが、これが非常に強い臭いを伴います。この糞をしたらすぐに除去し、ペット用の消臭グッズでニオイ対策をしてください。ケージ内にした糞もこまめに掃除しましょう。
「コケコッコー」という大きな鳴き声はニワトリの特徴ですが、これはオスだけの鳴き声です。ニワトリが鳴くのは朝方、しかも、かなり早い時間なので、近所と騒音トラブルになることがあります。
メスはほとんど大きな声で鳴くことはないので、都市部の集合住宅にお住まいの場合はメスを選びましょう。ただし、メスも産卵前後に大きな鳴き声を出すことがあるので、メスだからといって必ずしも安心とは言い切れません。
ニワトリは砂浴びや羽繕いをしますが、これらの行動で部屋は汚れます。
しかし、ニワトリにとって大切な習性なので、ケージをある程度汚れても構わない場所に置く、深さのあるケースに砂浴び場を作るなどして汚れ対策を行ってください。
砂はペットショップで販売しているもみ殻や藁でも代用できますよ!
なお、ニワトリに砂浴びをやめさせることはできません。体をきれいに保つための習性なので、この点は理解しましょう。
ニワトリのような家畜を飼育する場合は家畜伝染病予防法に基づき、各自治体に飼育することを届け出なければなりません。
申請内容は飼育者の氏名や住所、飼育場所、羽数など簡単な事項なので、面倒がらずに行いましょう。
ニワトリを飼育する旨をお住まいの区役所や市役所に伝えれば、手続きの手順を教えてくれます。
鳥類にはどうしても鳥インフルエンザの問題がつきまといます。
室内飼いで外部の動物との接触がない限りそこまで心配はありませんが、元気がない、下痢、息苦しそうにしている、まだ若いのに卵を産まなくなる、といった症状が現れた場合はなるべく早くニワトリを診察できる動物病院へ連れていきましょう。
このような症状が出ているからといって鳥インフルエンザであるとは限りませんが、一般家庭で家畜を飼う場合には「念には念を」の心がけが大切です。
また、普段から外部の動物(特に鳥類)と接触させないように注意することも忘れないでください。
ニワトリの室内飼いはそう簡単ではありませんが、次のようなメリットもあります。
ペットを飼うならやはり懐いてもらいたいもの。
その点、ニワトリは愛情を注いで育てると懐いてくれます。後をついて歩いたり、肩に乗ったり、甘えた声で鳴いたり、とてもかわいらしい仕草を見せてくれます。
メスはオスがいなくても卵を産みます。1日1個程度ですが、ペットが卵を産みその温かさを実感できる感動、そして産みたてを食べることは貴重な体験になります。
ニワトリは雑食性なので人間が食べるものもほとんど食べられます。そのため、調理や食事で出た食材カスや食べ残しも食べてくれます。
ただし、ニワトリにとって有害な食材もあるので、何でも与えて良いわけではありません。
200以上もの品種があるといわれているニワトリのなかでも、アローカナやボリスブラウンは優しい性格で飼いやすいようです。また、どちらも美味しい卵を産みますが、アローカナは青みがかった神秘的な色の卵を産むことで知られています。
少々変わった品種であれば烏骨鶏(うこっけい)もおすすめです。神経質な面もありますが、信頼している人にはよく懐く賢い品種。ふさふさの毛がチャームポイントですが、最大の特徴は黒い肌でしょう。最初はびっくりするかもしれませんが、これは生まれつきなのでご心配なく。
ニワトリを室内飼いするときの注意点やニワトリの習性・性格、飼育に適した品種についてご紹介しました。
ニワトリは人に懐き、とても可愛い仕草を見せてくれますが、室内で飼育する際はニワトリの特徴を十分理解し、環境をしっかり整えてあげる必要があります。
また、2歳半を過ぎると段々と卵を産まなくなってきますが、飼い主さんは引き続き愛情を注いで最後まで面倒をみてあげてくださいね。