日本にしか生息しない生物のことを指す「日本固有種」をご存じでしょうか? 自然豊かな日本には、海外では見られない貴重な生物がたくさん暮らしています。
そこで今回は、日本固有種についてや、固有種とされる動物たちをいくつかご紹介します。
日本は世界的に見ても実は生物多様性に富んでおり、固有種が多く分布する国として有名です。固有種の多さが一因となり、生物多様性の保全において世界的に重要な地域「生物多様性ホットスポット」に選定されているほどです。
日本に固有種が多い理由には、そもそも島国であることや、国土が南北に長く気候に恵まれていること、さらに標高差があり地形が複雑であること、そして数多くの離島があることなど様々なポイントが挙げられます。
これらの要因が重なり日本独特の豊かな自然が生まれ、そこに適応した「固有種」が多く生存しているというわけです。普段生活しているとなかなか気付きにくいかもしれませんが、世界的に見ても日本は特殊な環境なのです。
「固有種」と聞くと特別なイメージがありますが、実は私たちの身近には日本ならではの生物がたくさん暮らしています。ここでは、特に代表的な生物をいくつか挙げていきます。
アオダイショウは沖縄県以外に幅広く分布するヘビで、全長最大2mほどに成長し、毒は持っていません。
山地から平地にかけて草むらや農地、河川敷など人の生活圏内によく生息しているので、見たことがある方は多いのではないでしょうか? 主に昼間に活動し、鳥やその卵、小型の哺乳類などを食べます。
ニホンノウサギは北海道を除く日本の本州や四国、九州に分布している固有種です。一般的に「ノウサギ」といえばニホンノウサギを指すことが多く、主に草原や森林などに生息しています。体長は50cm前後で、褐色の体毛をしており腹部は白いのが大きな特徴です。
ニホンノウサギは現在のところ絶滅の危惧はないといわれていますが、森林開発や害獣として駆除されることがある影響で生息数の減少が懸念されています。
ムササビは日本の本州、四国、九州に広く分布するリスの仲間です。体長と同じほどの長さの尻尾や、皮膜を広げて滑空飛行をすることで有名ですね。
モモンガとよく間違われますが、ムササビはモモンガと比べ体が大きく、目は小さめです。生息地は低地~亜高山帯と幅広く、山地だけでなく低地にある神社やお寺、林など住宅地の近くで暮らしていることがあります。
固有種の中には自然や文化上、より価値のある重要なものとして「天然記念物」や「特別天然記念物」に指定されている種がいます。
ニホンカモシカは「カモシカ」という名前ですが、実はウシの仲間。北海道以外に広く分布し、標高1500~2000mの山岳地に生息しています。そのため、岩や崖でも登れる丈夫な蹄をもっており、この蹄の間や目の下にある匂いが出る器官を使って、縄張りに匂いの印をつけます。
ニホンザルは本州、四国、九州に分布し、人間以外の霊長類の中で最も北方(青森県下北半島)に生息するサルとして有名です。
その広い分布域の中でも、ある6か所の生息地において、天然記念物に指定されています。温泉に入るサルとして海外でも人気がある一方、日本では人里に降りたニホンザルによる各地の農業被害が深刻化しています。
ヤンバルクイナはその名前の通り、沖縄県の山原(やんばる)だけに生息する飛べない鳥です。種の保存法による国内希少野生動植物種に指定されている上、レッドリスト絶滅危惧種IA類でもある希少な種類です。
主に地上で生活し、林の中でミミズやカタツムリなどを食べますが、餌を求めて道路まで出てくることも。マングースなど哺乳類による捕食や、ロードキルによる絶滅が危ぶまれています。
今回ご紹介したほかにも、日本には固有種がたくさん存在していますが、その中には人間の活動によって絶滅の危機に瀕している種もいます。日本の固有種を守ることは、世界の生物多様性保全にも繋がる重要な問題です。
この機会に今一度、私たちの周りの生物たちについて何ができるのかよく考えてみましょう。