小説や児童文学の世界でも愛される動物たち。心揺さぶるような名作、大人になっても忘れられない物語…さまざまな作品が文学の世界を彩ります。
動物が登場する物語は子供向けが多い印象ですが、大人向けの読み応えある小説も数多いため、読書を楽しみたいときにはぜひ手にとってみてください。
今回は、大人も楽しめる小説や、子供の頃の気持ちを思い出させてくれる児童文学など、動物が登場する作品についてご紹介します。
「いくつになっても動物が大好き」「我が家のペットもかわいいけれど、作品の中で活躍する動物が見てみたい」。そんな大人におすすめする動物小説5選をご紹介します。
猫の目線から描かれる人間社会が印象的な小説です。2018年には福士蒼汰さん主演の映画も公開され、多くの人々の心をつかみました。
1匹と1人で楽しく暮らしていた元野良猫のナナとサトル。しかし、ある事情によってサトルはナナと別れる選択をします。ナナはサトルとともに銀色のワゴンに乗り、新しい飼い主を探しに旅立ちましたが…。
旅の途中に出会う人々との交流や美しい風景の描写が、読者も一緒に旅行をしているような気持ちにさせてくれる小説です。やがて明かされるサトルの秘密を知ったとき、思わず「嘘でしょ」と声が出るかもしれません。
2021年の本屋大賞第3位を獲得し、当時話題を呼んだ小説。著者・伊吹有喜さんの母校を舞台にしたこの作品は実在した犬をモデルにしており、犬の視点を通して高校生の青春を描きました。
18歳ならではの悩み、友情、恋愛など、その時代にしか経験できない日々。昭和、平成、令和まで、オムニバス形式でさまざまな高校時代が鮮やかに描写されます。
読む年代によって、共感や追憶などそれぞれの楽しみ方ができる秀逸な小説です。
年若い牧師と1匹のペンギンが親友になるまでを追った実話です。言葉が通じなくてもいつしか通い合うふたりの心の交流にぐっとくる人も多いかもしれません。
重油にまみれ、息絶えた数百羽のペンギン。そのなかでただ1匹生き残ったペンギンを保護したトムは、ペンギンを「フアン・サルバドール」と名付け、学校の屋上で飼うことにしたのですが…。
ペンギンの賢さやトムの思慮深さ、ふたりの間に生まれる友情。心ゆさぶられるようなラストシーンは涙なくしては読めません。
人間社会を支えてくれる一面に動物実験があります。なぜ動物実験が必要なのか、その動物に心を寄せたことはあるのか…。実験動物を世話する女性を追ったノンフィクションです。
人間の健康はそれに関わる動物や人々のおかげで保たれていることも確かな事実です。その動物の毎日を支えるために働く女性・テルは、どのように動物に接しているのか…。
デリケートなトピックを扱っていますが、読後感は決して悪いものではなく、社会を支えてくれる動物たちに改めて心を向けたくなる1冊です。
1945年に刊行された小説で、とある動物農場を通して当時の社会情勢を描いた小説です。文豪ならではの筆力が寓話の世界にリアリティを与え、パワフルな空間を描き出します。
とある農場の動物たちは、劣悪な環境を強制する農場主にうんざりし、反乱を起こして追い出してしまいました。これで理想的な環境になると思ったのもつかの間、リーダーの豚が独裁者になってしまい…。
当時の社会を風刺した小説ですが、歴史好き・動物好きの両方に訴える秀逸なストーリーです。
動物が登場する本といえば、やはり児童文学は欠かせません。幼い頃に読んでいた思い出の1冊、家族で一緒に読みたい1冊などの4選をご紹介します。
賢い猫が少し頼りない飼い主をあれよあれよと言う間に出世させる物語。幼い頃に読んだことがある人も多いのではないでしょうか。
亡くなった粉屋の親から遺産を相続した3人の息子たち。上の2人はよいものをもらったというのに、末息子が手にしたのはたった1匹の猫だけでした。がっかりする末息子ですが、賢い猫の言う通りにしてみると…。
猫の活躍で立身出世の道を駆け上る飼い主の姿は見事なものです。そんな賢さ持つ猫を見て、思わず自分の愛猫に「あなたも?」と話しかけたくなってしまうかもしれませんね。
動物学者の今泉先生が日々の研究について紹介する1冊です。「研究を紹介する」というと堅苦しく感じますが、小説よりも波瀾万丈の毎日に思わずクスッとしてしまいます。
学者なら机に向かってたくさんの文献を読んで…と思いきや、今泉先生はとてもアクティブです。ミノムシを集め、動物にお弁当を奪われ、ときにはクマに遭遇することも…。
毎日大変ですが、刺激と笑いの絶えない日々の描写はいつの間にかページをめくるおもしろさに満ちています。イラストもかわいらしく、読書が苦手な人にもおすすめです。
祖母との別れ、老犬の寿命と直面した家族たちが送る日々の物語。命と向き合い、命とは何かを考えるときに手に取りたい1冊です。
ふたばの祖母が突然亡くなり、残された老犬・ハニーを引き取ることに。はじめはぎこちない関係でしたが、やがて打ち解け、信頼関係を築けるようになりました。しかし、ハニーは重い病気にかかってしまいます。近づく別れにふたばや家族たちは「何ができるだろうか」と懸命に考え…。
動物と暮らす人が必ず直面する命の「終わり」だけではなく、「何ができるか」にフォーカスした物語です。児童向けですが、大人も深く考えさせられるのではないでしょうか。
クモのシャーロットと子ブタのウィルバーの交流を描いたハートフルストーリー。世界23カ国で翻訳され、4500万人の人が手に取った名作です。
子ブタのウィルバーは牧場でのんびり暮らしていましたが、ある日、いずれはハムにされてしまうことに気づきます。自分の運命に悩むウィルバーを、クモの女の子・シャーロットが助けてあげようとするのですが…。
シャーロットの賢さで人間を翻弄するシーンや、友情が深まっていくシーンなど、ほどよい波のあるストーリーが笑顔にさせてくれます。ふたりの友情の行く末が気になりますね。
映画やドラマでも動物が活躍する作品は多々ありますが、小説や児童文学のなかで活躍する動物たちもいとおしいものです。
文字が紡ぎ出す光景を想像すれば、笑顔になったり、涙をぬぐったりする時間が楽しめます。1人で、家族で、ぜひお気に入りの1冊を見つけてみてください。