馬は古くから人間の生活に欠かせない存在であり、交通手段、農業、スポーツなど、様々な面で重要な役割を果たしてくれています。
一方で、馬の生態や生活スタイルについては実はあまり知らないという方も多いのではないでしょうか?
馬は生物学で「哺乳綱奇蹄目ウマ科ウマ属」というグループに分類されており、群れで生活します。
このグループにはロバやシマウマなどがいて、姿形がよく似ていますよね。
奇蹄目にはサイやカバも属していますが、体が重くて水中での生活に適していることや、単体で行動する点が異なります。
馬は大きな体と力を持っていますが、温和で友好的な草食動物で、攻撃的でない性格が多くの人々に人気がある理由の一つとなっています。
ただ、そのような性格がゆえに細かな環境の変化に敏感で、突然の動きや予期せぬ音に反応して驚いてしまう場合があるのです。
このため、馬は安定した環境と予測ができる暮らしを好み、信頼できる人間との関係を大切にします。
この臆病で敏感な性格は、馬が持つ「逃げる」という本能に直結していて、危険を感じた際には戦うよりも逃げるという手段を選ぶという、野生の環境で生き残るための戦略から芽生えたものです。
人間はこの本能を理解し、適切なトレーニングとケアを提供しており、馬との深い絆を築いています。
馬の体の大きさは、種類によって異なります。
最も小さい種類の馬は、成長しても体高が約76センチメートルから97センチメートルほどにしかなりませんが、大型の馬は体高が160センチメートルを超えることも珍しくありません。
体重も幅広く、約150キログラムから1,000キログラム以上まで様々です。
馬はスポーツ、農業、レジャーなど、人間の様々なニーズに応じてくれていますが、体の大きさと同様に、種類によって性格や学習能力、適応能力が異なり、作業の向き不向きがあるのです。
例えば、競馬に最も一般的に使用される種である「サラブレッド」は高いスピードと持久力を持ち合わせており、「アラビアン」は耐久力が高く、長距離の競技や乗馬に向いています。
「クォーターホース」という短距離のスプリントやロデオ、乗馬に優れている種も存在しますね。
競走馬以外では、「シャイア」という重い荷物や馬車を引くのに適した大型の馬や、独特の斑点が特徴的で主に牧場作業などで活躍してくれる「アップルーサ」が代表的な種です。
他にも個性的な馬が多くいるので、興味があればぜひ図鑑などで詳しく調べてみて下さいね。
馬の視力は、人間と比べると物を鮮明に見るという点ではやや劣るものの、動体視力が優れており、広範囲を警戒するのに適した視界を持っています。
視界は、目が頭部の側面に位置していることから、ほぼ死角のない約350度に及び、捕食者に対して迅速な対応が可能です。
特に黄色、緑、青を識別する能力に長けており、これは食べ物の探索や他の馬とのコミュニケーションに役立ち、紫外線も感知できるため、夜間の視認性が高いことでも知られています。
その一方で、赤色の識別が難しいとされていますが、これは低照度環境や夜間の視認性に適応しているためです。
そして馬の耳は非常に柔軟で、最大約180度の回転が可能です。
この能力は遠く離れた場所からの音や、地表を伝わる微小な振動を感知し、超音波も聞き取れるため、視覚と合わせて捕食者などの脅威をいち早く察知するのに役立ちます。馬を観察する際は、ぜひ耳の動きにも注目してみて下さい。
嗅覚も他の感覚と同様かなり発達しており、人間と比べて約1,000倍の感度を持っているといわれています。
この嗅覚を利用して自分の子供や他の群れのメンバーを識別したり、食物の新鮮さや品質を判別したりと、多くの情報を得ているのです。
また、特定の人間の匂いを覚え、安心感や親近感を覚える能力もあり、それが飼育者やトレーナーと良い関係を築ける理由にもなっています。
馬の寿命は、品種、飼育環境、健康管理など様々な要因によって大きく異なりますが、大型馬よりも小型馬やポニーのような品種の方が比較的長生きする傾向にあります。
平均寿命は約20年から30年ですが、最も長いものではイギリスの「オールドビリー」という馬が、なんと62歳まで生きた例があります。
飼育下で寿命を延ばすためには、獣医による定期的なチェック、適切な餌と水やり、適度な運動が必要で、清潔で安全な環境にいる馬はストレスが少なく、健康的な生活が送れるため、長生きする可能性が高まります。
馬は前述したとおり草食動物です。
草や干し草を主食としているため、消化器系は草類を効率よく消化するよう進化していますが、果物などの甘いものに対しても好みを示します。
馬の好物と言えば「ニンジン」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
よく物語やアニメなどの描写にもあるように、実際にニンジンをご褒美として使い、訓練やケアの際の動機付けとする場合があります。
その他、穀物を活動的な馬や競走馬のエネルギー源として与えられるケースも多いですね。
馬の食事は、年齢、体重、健康状態、活動レベルに合わせて調整し、慎重な管理が必要です。
一般的に馬の総睡眠時間は1日に約3時間程度とされており、これは他の哺乳類と比較してかなり短い部類に入ります。
この短い睡眠時間は野生の環境に適応した結果であり、敵からの攻撃を避けるために長時間の深い睡眠を取らないようにしているのです。
睡眠時の姿勢は大きく分けて二つあり、一つ目は立ったまま睡眠をとる「立ち寝」と呼ばれるもので、立った状態で軽い眠りにつきます。
立ち寝はとても浅い睡眠で、いつでも素早く起きて逃げる準備ができるという姿勢です。
二つ目は、地面に腹這いになって眠る「伏せ寝」というもので、深い睡眠をとる際に見られる姿勢です。
この睡眠は身体の回復に不可欠ですが、伏せ寝は立ち上がるのに時間がかかるため、安全で落ち着いた環境でのみ行われます。
群れでの生活をする中で、他の個体が周囲を警戒している間に安心して伏せ寝をするのです。
馬は通常、穏やかで友好的な動物ですが、ストレスや不安を感じる状況では稀に攻撃的な行動をとります。
特に、噛む行動は警告や自己防衛として、蹴る行動はより直接的な脅威に対する強い反応として起こり、これらの行動を示す時は、何らかのストレスや不安、不快感を覚えているサインである可能性が高いです。
私たち人間と馬の接触においては、適切な関わり方を理解し、安全のために注意を払うのが重要で、馬を驚かせないよう、特に大きな音や突然の動作は避けましょう。
馬は視界が広いものの、直接背後を見られないため、死角からの接近を避ける必要があり、接近する際は前方からゆっくりと近づくことが望ましいですね。
また、人の感情や意図を感じ取れるとされているため、触れ方や声のトーンなども穏やかで安心させるように接するよう心掛けましょう。
飼育者やトレーナーはこれらの行動原則を理解し、馬が感じるストレスを最小限に抑えて関係を構築しています。
馬の社会的特性に合った教育方法を実践することで、人間と強い絆を持つパートナーとして成長してくれるのです。
このように馬は元々、野生の中で群れで生活する社会的な動物でしたが、今では私たち人間の生活にとって欠かせない存在となっていますよね。
ただ、その一方で現在では野生の馬がいなくなってしまい、保護活動の一環として野生に返すプロジェクトも行われています。
日本では、乗馬クラブや地域の農場を通じて直接触れ合えるので、興味があればぜひ訪れてみて下さい。
馬との交流は、新しい感動や発見があるかもしれませんよ!