大きくてたくましい身体と強そうな角が魅力的で、動物園ではメジャーで人気者の「サイ」ですが、野生での生態や、どのような種類が存在するのかについては深く知らないという人が多いのではないでしょうか?
そこで今回はサイの種類やそれぞれの特徴、生態について詳しく解説します。
サイにはヒヅメがあり、生物学上では馬や牛、鹿の仲間に分類されます。
巨大な身体であることが有名で種によって大きさは異なるものの、一般的には体長が2.5メートルから4メートルに達します。
体重は800キログラムから3トンにまで及び、特に「シロサイ」は現存する陸生哺乳類の中では象に次ぐ最大の部類に入ります。
サイの皮膚は5センチ程と、人間の2ミリと比べて極めて厚く、外部の脅威から保護する役割を果たしています。
ただ、皮膚が厚いのにもかかわらず血管が表面に近い場所にあるため、日焼けや虫刺されには敏感です。
生息地はアフリカ大陸とアジアの一部で、アフリカのサバンナ、草原、森林地帯に「シロサイ」と「クロサイ」が生息しており、アジアの熱帯雨林、草地、沼地には「インドサイ」「ジャワサイ」「スマトラサイ」が生息しています。
サイは草食動物で、主に草、葉、枝などを食べます。食物の種類は生息地によって異なり、サバンナに生息する種は主に草を、森林地帯に生息する種は木の葉や果実を食べることが多いです。また一日の大部分を食事に費やし、活動的になるのは早朝や夕暮れ時の夜型です。
現存しているサイは5種類で、それぞれ異なる特徴があり、生息地が分かれています。
白という名称が入っている「シロサイ」ですが、実際には白ではなく灰色の体色です。
最も大きなサイの種で、体長が4メートル、重さ3トンを超える個体も珍しくありません。
長い二本の角と広い口を持ち、主に草を食べます。アフリカのサバンナや草原に生息し、南部アフリカで見られることが多い種です。
シロサイは「ミナミシロサイ」と「キタシロサイ」に分かれ、キタシロサイに関しては自然界で見ることがなくなり、絶滅した可能性が高く現在では保護下で数頭生存しているのみとなっています。
平均体長が3メートル、重さ1トンほどで、シロサイより小さい「クロサイ」は細身の身体と鋭い口が特徴的です。
主に木の枝や葉を食べ、東部アフリカと南部アフリカの草原、森林地帯に生息しており、生息地によって4つの亜種に分類されることもあります。
シロサイと同じく二本の角を持ち、体色も黒ではなく灰色であるため角や色での見分け方は難しく、基本的には口元で見分けられます。
地上の草を食べるシロサイが平たい口なのに対し、木の枝や葉を食べるクロサイは小顔で上唇が長いのです。
シロサイに次いで大きい種である「インドサイ」は、体長3メートル、重さ2トン程度になる個体が主となっています。
鎧のような大きな皮膚が重なっているのが特徴的で、シロサイやクロサイと異なり、角は一本です。
主にインド北部とネパールの草地、沼地、森林地帯に生息し、草だけでなく、果実も食べます。
インドサイに似ていて、より小さい「ジャワサイ」も皮膚のプレートを持ちますが、インドサイほど顕著ではありません。
過去には幅広い地域に生息していましたが、現在ではインドネシアのジャワ島の限られた地域にしか生息しておらず、野生では100頭を切っており限りなく絶滅に近い種です。
荒い体毛で全身覆われているのが特徴的な「スマトラサイ」は、現存するサイの中で最も小さい種で、二本の角を持ちます。
インドネシアのスマトラ島とマレーシアの一部に生息し、古代からほぼ姿を変えずに生存している珍しい種です。
熱帯雨林に適応して生活していますが、こちらもジャワサイ同様に野生ではほぼ見られず、絶滅に近い種となっています。
このようにサイの種類は、地理的分布、外見、食生活などで区別されますが、その全てが絶滅の危機に瀕しており、保護活動が急務です。
サイの生態は多面的で、巨大な身体に対して意外な一面や行動、生理的特徴など、興味深い側面を持っています。
サイの寿命は種によって異なりますが、野生では平均で30年から40年程度で、比較的長寿の部類に入ります。
保護された環境下、動物園ではこれより長く、50年以上生きることもあります。
サイの角は骨のように見えますが、骨ではなく緻密な繊維質の集まりで、髪の毛と同じタンパク質、ケラチンでできています。
角は戦闘や防御の際に使用され、生涯を通じて成長し続けるため、定期的に木や岩で研いでいるのです。
また、角はサイの種類によって形やサイズが異なるため、角を見ることでも種を識別できます。
サイの視力はかなり限られており、数メートル先の物しか認識できません。
ただ、遠くの物を識別するのが苦手なものの十分な視力を持っており、視力の限界を補うために優れた聴覚と嗅覚を持っています。
特に嗅覚は、食物を探すために必要不可欠なため、かなり発達しています。
サイの身体は基本的に1トンを超える重さであるため、走ることには向いていないように思われがちです。
しかし、実は大きな身体と相反して驚くほど速く走ることができて時速50キロ以上に達することもあり、このスピードは捕食者からの逃走をかなり有利にします。
サイは常につま先立ちの状態で過ごしており、そのこともスピードが出る理由の一つです。
育児をするのはメスのみで、母サイと子サイは密接な親子関係を形成します。
子サイは2~3年の間、母サイから哺乳、保護、そして生きるためのスキルを学ぶのです。
育児の期間中は他の子どもを産まず、1体のみ集中して育てます。
サイは自然界において絶滅危惧種となっていますが、これは人間の活動によって存続が脅かされているためです。
サイは巨大で厚い皮膚に覆われた身体と強力な角により、ほとんどの肉食動物から襲われる心配がなく、自然界における天敵は限られています。
しかし、小さいサイや病弱な個体は、ライオンやヒョウなどの大型捕食者に狙われることがあります。
それよりも、サイにとって最も大きな脅威は「人間」です。
サイの最大の脅威は、人間による密猟です。
サイの角は科学的根拠がないのにもかかわらず、一部の文化で薬効があると信じられており、高価な価値が付けられているため多くのサイが違法に狩られ、種の存続が危険に晒されています。
特にアジア圏のサイの密猟による影響は深刻で、絶滅の危機に瀕しています。
現在、多くの国や国際組織、地域コミュニティが協力し、サイの絶滅を防ぐための取り組みをしています。
具体的には密猟の防止、生息地の保全、繁殖プログラムの実施、意識啓発キャンペーンなどの保護活動です。
また、動物園は絶滅の危機に瀕しているサイの保全の役割を勤め、保護するための支援を促す場でもあります。
サイは野生では絶滅の危機に瀕していますが、多くの動物園で飼育されているため、身近に観察できます。
巨大な身体、厚い皮膚、個性的な角など、サイの特徴を間近で見られるのは興味深く、特にシロサイが大きな口で草を食べる様子、仕草には迫力があります。
また皮膚の保護と体温を調節するための泥浴びをしている動作や、サイ同士のコミュニケーション、親子の絆を観察できるかもしれません。
飼育員からサイの日常的なケアや、固有の行動について聞いて学んでみることは、子どもたちにとって野生動物への関心を育む経験となるでしょう。
サイの魅力を知るために動物園に足を運び、ぜひ間近で観察してみてはいかがでしょうか?