多くの神社で見かける「狛犬」。犬好きなら一度は気になったことがあるのではないでしょうか。
狛犬は長い歴史のなかで人々の生活に溶け込み、親しまれてきました。また、沖縄には狛犬によく似た「シーサー」もいます。
今回は狛犬の歴史や意味、シーサーとの違いなどについてご紹介します。
日本の狛犬は海外から伝わったといわれています。起源は諸説あり、古代オリエント時代という説もあります。日本に伝来するまでどのような歴史をたどってきたのでしょうか。
狛犬の起源でもっとも古い説では、古代オリエント時代だといわれています。
かつてオリエントでは獅子を守護神として信仰する文化がありました。その獅子が狛犬となって世界に広がったとのことです。
なお、エジプトのピラミッドで有名なスフィンクスも獅子がモチーフになっています。そう考えると、狛犬はスフィンクスの仲間かもしれませんね。
狛犬の起源は中国であるという説もあります。オリエントからローマを経て、インドから獅子が伝わったそうです。
中国で獅子は権力や守護の象徴として崇められるほか、宗教的な意味合いも持つことになりました。
宗教的な意味合いを持った獅子は、やがて高麗(いまの朝鮮半島)に渡り、そこからさらに海を渡って日本へやってきました。
狛犬の「こま」は「高麗(こうらい)」が語源だという説もあります。
高麗からやって来た狛犬は、やがて日本中へ広まります。その経緯や役割を見てみましょう。
狛犬が高麗から日本へやって来た経緯は、遣隋使や遣唐使がきっかけだと考えられています。大陸と交流するとき、仏教や文化と一緒に入ってきたのでしょう。
西暦607年に建立された法隆寺には獅子の像があります。その頃にはすでに狛犬が日本に入っていたと考えられそうですね。
日本へ伝来した当初、狛犬はいまのように人々に身近な存在ではありませんでした。当時は天皇や皇統の守護獣として扱われていたようです。この時代の古典文学にも尊い存在として登場しています。
やがて狛犬は天皇と縁のある神社にも置かれるようになり、日本へ広がりました。伝来当初は左右対称だった狛犬は、時代を経るにつれて非対称になり、いまの「阿吽」の形になったそうです。
かつては宮中の守護を担っていた狛犬ですが、日本中の神社に広がり、人々の生活に登場するようになってからは、少しずつ役割が変化しました。
神社では参道を守り、魔除けの役割を担っています。神域が侵されないよう、最前線で重大な役割を果たしているのですね。
また、人々はその魔除けの力を借り、身体の痛みを取ってもらえるよう信仰していたそうです。
身体の痛みと同じ場所をなで、「早く痛みがよくなりますように」とお祈りしたのだとか。効果のほどは分かりませんが、人々が大切に信仰していたことは確かでしょう。
沖縄でよく知られる「シーサー」は、狛犬とよく似た外見をしています。沖縄は独特の文化をつむいできた土地ですが、やはり魔除けとして置かれているのだそうです。その起源もやはり「獅子」にあり、土地は違っても共通する人々の想いに感慨深さを感じます。
ただ、狛犬と違う部分も多々あるようです。狛犬は神社の参道に置きますが、シーサーは一般家庭の屋根や玄関で見かけることも珍しくありません。
また、狛犬は神社に邪気が入らないように守り、ときには邪気と戦うそうです。いっぽう、シーサーは家の中に邪気が入らないようにしながらも、ときには幸運を招き入れることがあるのだとか。
カラーリングやサイズにも違いがあります。シーサーは狛犬よりも小ぶりで赤茶色の見た目です。狛犬はそれよりも大きく、灰色をしています。置き方も狛犬は左右非対称の阿吽ですが、シーサーは左右対称になっています。
魔除けという役割は同じなのに、違う部分が見えるのは興味深いですね。ただ、どちらも人々の生活に溶け込み、大切にされていることは間違いありません。
神社の邪気を払い、人々の身体から痛みを取り除くと言われている狛犬。普段なにげなく通っている参道でよく見かける狛犬たちが、そんな働き者だったと知らなかった人も多いのではないでしょうか。
これからは神社の前を通るとき、「がんばってね」と心のなかで声をかけてみるのも楽しいかもしれません。愛犬のお散歩ついでにエールを送るのも素敵ですね。