ヒレを揺らすたびにキラッと光る金魚。その可憐な泳ぎは見る者を虜にする魅力があり、江戸時代には庶民でも飼えるペットとして爆発的な人気が起こりました。この金魚ブームが去った後も、現在に至るまで常に一定の人気を保っているのは周知の通り。金魚は一般家庭で飼えるペットの代表格です。
さて、そんな金魚ですが、成長するとどれくらいの大きさになるのか疑問に思ったことはないでしょうか?
お祭りの金魚すくいやペットショップで見かける金魚は体長約3㎝~5㎝程度と小型ですが、「水槽が大きければそれだけ金魚も大きく育つ」という話があります。これが本当なら、飼育環境によっては想像以上に大きく成長する可能性も考えられるのです!
そこで今回は、水槽の大きさと金魚の成長の関係、大きくなる金魚の種類や金魚を飼う上での注意点についてご紹介します。
金魚の先祖は突然変異したフナであり、約2000年前の中国で発見されたといわれています。つまり、フナは約30㎝に成長する魚なので、金魚もそのくらい大きくなる可能性があるということ。
体長20cm〜30cmの魚を近くで見ると想像以上に大きく感じるものですが、金魚がこのくらいのサイズになると鱗の輝きやヒレの長さも相まって非常に重量感のある見た目になるでしょう。身近な例では煮付けでお馴染みの金目鯛をイメージしてみるとわかりやすいかもしれませんね。
ただ、大きくなる可能性があるといっても品種によって異なります。
では、金魚のなかでも特に大きくなる傾向がある品種とはどのようなものなのでしょうか。
お祭りの金魚すくいで見る朱色の小さい金魚。それが和金です。
「金魚といったら和金」と言っても過言ではないほど有名な品種であり、飼ったことがある方も多いのではないでしょうか。
そんな和金は、飼育環境によっては大きくなる可能性が高い品種であり、実際30cmを優に超えているものも少なくありません。
お祭りで連れて来た金魚も、大切に育てると大きく成長するのです!
朱文金は、和金と三色出目金、ヒブナをかけ合わせて作り出された品種です。
白や赤の体色に黒っぽいブチ柄が特徴で、長い尾ビレをゆったり揺らしながら泳ぐ、優雅で性格の穏やかな品種ですが、もともと大型の品種であるため成長すると30cm前後にまで大きくなります。
白と赤の体色、レースのような半透明の尾ビレが美しいコメットも大型の品種です。体型自体はほっそりしていますが、成長すると30cm以上になることがあります。
尾ビレの切れ込み(くの字部分)が深いと大きくなる可能性が高いので、購入する際の参考にしましょう。
中国原産のオランダ獅子頭は頭にコブがあり、体は膨らんでいるぽっちゃりしたかわいい大型品種です。
こちらも30cm前後にまで成長する可能性がありますが、もともとの体型がぽっちゃり型であるため大きくなるとかなり迫力のある姿に。
飼い主さんとしては少々戸惑ってしまうこともあるでしょう。しかし、ぷくぷくとした体は福を運んできそうで、なんだか得をした気分になれるかもしれません!
前述のオランダ獅子頭と三色出目金をかけ合わせた品種で、成長するとオランダ獅子頭と同じく30cm前後になる可能性があります。
見た目は朱文金と似ていますが、東錦には頭にコブがあるのでよく見ると区別できます。見た目を裏切らないおっとりした性格で、比較的体も強く、初心者の方にもおすすめの品種です。
白い体色の体に赤いコブ付きの頭が印象的な丹頂。こちらも大きくなる品種ですが、上記の品種と比べると小さめで、成長後の体長は20cm前後。
それでも小さめの品種と比べると大きく、「想像以上に成長してびっくりした!」と驚く飼い主さんも少なくありません。
上記の大型品種はもともと大きく成長する素質がありますが、すべての個体が必ず大きくなるわけではありません。
そこで注目されるのが金魚の飼育環境です。冒頭でご紹介した「水槽が大きければそれだけ金魚も大きく育つ」という話は、飼育環境が金魚の成長にどれだけ影響を与えるかという論点につながりますが……
結論から言えば、金魚は飼育する水槽のサイズが大きいと、金魚も大きく成長しやすくなります。
というのも、金魚は飼育環境に合わせて成長する習性があるといわれており、水槽のサイズが大きいとそれに合わせて大きくなるからです。
また、のびのび泳ぎやすい環境はストレスがたまらず、餌から摂った栄養がしっかり体に回り、大きくなりやすいということもあるでしょう。
ですから、金魚を大きく成長させたい場合は稚魚の頃から大きな水槽で飼うことが大切です。
逆に、最初から小さいサイズの水槽で育てれば、大きくなる種類の金魚でもある程度は大きさを抑えられるでしょう。
しかし、強制的に成長を抑えることは金魚の健康に良くありません。
狭い環境にストレスを感じて食欲が落ちたり、運動不足になったりすると体調不良を招きやすくなります。また、もともと穏やかだった性格が攻撃的になることも。
長生きできる健やかな金魚を育てるなら、やはり適切な飼育環境を用意してあげることが一番です。
和金や朱文金、コメットなど大型品種を買う場合、水槽は幅60cm、最低でも45cm以上のサイズを検討しましょう。
マンションやアパートなど集合住宅にお住まいの方は、大きな水槽を設置できない場合が多いもの。大きくなる品種だと知らずに飼うと、成長するにつれて水槽のサイズが合わなくなる可能性があります。そして、金魚に大きなストレスを与えてしまい、かわいそうな思いをさせてしまいます。
したがって、金魚を飼育する際はどれくらい成長するか、事前に調べておくことが大切です。
あまり大きくならない品種には「らんちゅう」「水泡眼」「頂点眼」などフナの体型と離れている品種が挙げられます。これらの品種は比較的小さな水槽で飼えるので、広い飼育スペースが取れない場合にはおすすめです。高価格のものが多いですが、動作がゆっくりで愛らしい姿に癒されます。
ただし、コップやどんぶり皿に入れて飼うのはやめましょう。
狭いのでストレスになりますし、酸素ポンプやヒーターなどを設置できないので適切な飼育環境が作れません。
最近ではベタが「コップで飼える金魚」として注目を集めていますが、適切な飼育環境が与えられなければ短期間で命を落としてしまうことも……。
金魚を買うと、「1匹では寂しいかも」「いろんな金魚を眺めたい」と1つの水槽に何匹も泳がせたくなるかもしれません。しかし、それぞれがゆったり泳げるスペースを確保できる大きさの水槽を用意しないとストレスがたまってしまいます。前述のように成長すると30㎝にもなる大型品種であればなおさらでしょう。
大きな水槽を設置するスペースがない場合は、大きく成長しない種類を選んだり、飼育する金魚の数を抑えたりすることが大切です。
水槽の大きさと金魚の成長の関係、大きくなる金魚の種類や金魚を飼う上での注意点についてご紹介しました。
昨今、金魚に限らず「予想外に大きくなった」との理由で飼育が難しいと感じる飼い主さんが増えていますが、よほどのことがない限り、お迎えする前にその動物についてしっかり調べていればこのような事態は避けられるものです。
どのような動物であっても、適切な飼育環境を用意できるかどうか、よく検討してからお迎えするようにしてくださいね。